「みんなに届けたい」
昔の僕は、そう思って文章を書いていました。
せっかく書くなら、できるだけ多くの人に読まれたい。
誰か一人だけではなく、いろんな人に役立つ内容にしたい。
なるべく広く、なるべく外さないように書きたい。
そう考えていました。
でも、広く書いた文章ほど、なぜか誰にも響きませんでした。
読める。
間違ってはいない。
でも、残らない。
自分でもどこか薄いと感じていました。
今ならわかります。
「みんな」に向けて書いていたからです。
今日は「たった一人に向けて書くと、なぜ刺さるのか」について書きます。
みんなに向けると、誰にも刺さらない
全員に届けようとすると、言葉はぼんやりします。
できるだけ多くの人に当てはまるようにする。
誰かを外さないようにする。
強く言い切らないようにする。
なるべく無難な表現にする。
そうすると、角が取れます。
でも、角が取れた言葉は、引っかかりもなくなります。
当たり障りのない文章。
どこかで見たような表現。
正しいけれど、残らない言葉。
昔の僕は、よくそういう文章を書いていました。
「発信は継続が大事です」
「読者目線を意識しましょう」
「価値提供をしましょう」
「自分の強みを活かしましょう」
全部、間違ってはいません。
でも、誰の顔も浮かんでいない。
だから、読んだ人も「自分に言われている」と感じない。
「みんな」は、実は誰でもありません。
みんなに向けた言葉は、誰にも届かないことがあります。
一人に向けると、言葉が具体的になる
逆に、たった一人を思い浮かべると、言葉は変わります。
その人は、何に悩んでいるのか。
どんな場面で手が止まっているのか。
どんな言葉で自分を責めているのか。
夜中に何を検索しているのか。
どんな教材を買って、どこで積んでいるのか。
そこまで想像すると、文章に具体性が出ます。
たとえば、
「ノウハウを集めても不安が消えない人へ」
これは、かなり狭い言葉です。
でも、その状態にいる人には刺さります。
「教材を買った直後だけ安心して、数日後にはまた不安になっている人へ」
ここまで書くと、さらに具体的です。
読む人は、ただ情報を読んでいるのではなく、自分の状態を見つけます。
「あ、これ自分だ」
そう思った瞬間に、文章は入っていきます。
一人に向けると、読者を狭めているように見えます。
でも実際には、似た悩みを持つ多くの人に届きます。
なぜなら、人の悩みは意外と重なっているからです。
一人を深く見ると、その奥に同じ痛みを持つ人たちがいます。
その一人は、昔の自分でいい
誰に向けて書けばいいかわからない。
そう思うなら、昔の自分でいいです。
過去に同じことで悩んでいた自分。
何度も検索していた自分。
ノウハウを集めても不安が消えなかった自分。
何を売りたいのかわからず、手が止まっていた自分。
教材を買って安心して、でも何も変わらなかった自分。
その頃の自分に向けて書く。
それだけで、文章はかなり変わります。
昔の自分なら、どんな言葉に反応したか。
何を言われると少し救われたか。
どんな正論にはうんざりしたか。
何を先にわかってほしかったか。
それを思い出しながら書く。
このサイトも、基本的には昔の僕に向けて書いています。
すごい人に向けているわけではありません。
すでに軸が決まっている人に向けているわけでもありません。
ノウハウを集めても不安が消えなかった頃の自分。
枝葉ばかり追いかけて、根っこを見失っていた頃の自分。
その人に向けて書いています。
→ はじめての方へ
一人が決まると、迷いが減る
書く相手が一人に決まると、文章の迷いが減ります。
何を書くか。
どこまで説明するか。
どんな言葉を使うか。
何を省くか。
どの記事へ案内するか。
何をすすめて、何をすすめないか。
全部、その人を基準に決められるようになります。
たとえば、昔の僕に向けて書くなら、過剰に煽る必要はありません。
もう十分焦っていたからです。
「今やらないと手遅れです」
「行動しない人は変われません」
「本気の人だけ来てください」
そんな言葉は、たぶん余計に苦しくなる。
必要だったのは、もっと静かな言葉でした。
「足りなかったのは、情報ではなく軸だった」
「ノウハウを増やす前に、根っこに戻ろう」
「誰に何を届けたいのか、そこから考えよう」
こういう言葉です。
相手が決まると、言葉の温度も決まります。
文章は、誰に向けるかで変わります。
→ 相手の決め方は「何を売りたいかわからない人が最初に考えること」に書いています。
広く書くほど、薄まる
広く届けたい気持ちは悪くありません。
読まれたい。
役に立ちたい。
多くの人に届いてほしい。
そう思うのは自然です。
でも、最初から広く書こうとすると、言葉は薄まります。
誰にでも当てはまるようにした言葉は、誰にも深く刺さらない。
誰も傷つけないようにした文章は、誰の心にも残らない。
無難にした表現は、無難に流れていく。
昔の僕は、広く届けようとして、逆に届かない文章を書いていました。
本当に必要だったのは、もっと狭く見ることでした。
たった一人を思い浮かべる。
その人の悩みを具体的に見る。
その人にだけ届けばいいと思って書く。
その方が、言葉は強くなります。
そして不思議なことに、たった一人に向けた言葉の方が、結果的に遠くまで届くことがあります。
広げるのは、あとでいい。
まずは一人。
昔の自分でもいい。
目の前の誰かでもいい。
同じ悩みで止まっている人でもいい。
その人に向けて書く。
そこから、文章は始まります。
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