正しいことを書いているのに、伝わらない。
昔の僕は、ずっとそこでつまずいていました。
言っていることは間違っていない。
理屈も通っている。
伝えたいこともある。
それなのに、読んだ人の心が動いている感じがしない。
文章としては整っている。
でも、どこか薄い。
読まれているかもしれないけれど、残っていない。
その理由が、当時はわかりませんでした。
僕は、正しいことを言えば伝わると思っていました。
「軸が大事です」
「誰に届けるかを決めましょう」
「ノウハウを集める前に土台を整えましょう」
全部、間違ってはいない。
でも、それだけでは人の心は動きませんでした。
今日は「ストーリーで語ると、なぜ伝わるのか」について書きます。
正論は、正しいけど刺さらない
正論は、正しいです。
でも、正しいだけでは刺さりません。
たとえば、
「軸が大事です」
これは正しいです。
でも、この一文だけで人が動くかというと、かなり難しい。
なぜなら、読んだ人の中でまだ自分ごとになっていないからです。
「そうだよね」
「大事なのはわかる」
「たしかにそうだと思う」
そこで止まってしまう。
頭では理解される。
でも、心までは届かない。
昔の僕は、ここを勘違いしていました。
正しいことをわかりやすく書けば、伝わると思っていたんです。
でも実際には、正しさだけでは読者の中に入っていきません。
読者が動くのは、正論を聞いたときではありません。
「これ、自分のことだ」と感じたときです。
ストーリーは、読者に追体験させる
たとえば、こう書いたらどうでしょう。
夜中に、また教材の販売ページを見ていた。
もう買わないと決めたはずなのに、気づけば決済画面まで進んでいる。
「これは自己投資だから」と自分に言い聞かせて、購入ボタンを押す。
決済完了メールが届いた瞬間だけ、少し安心する。
でも、そのあとすぐに後ろめたさが来る。
これは、ただの説明ではありません。
場面があります。
感情があります。
自分をごまかしている感じがあります。
買った瞬間の安心と、その後の後ろめたさがあります。
同じ経験をした人なら、読んだ瞬間に引っかかります。
「あ、これ自分だ」
そう感じる。
ストーリーには、読者に追体験させる力があります。
正論は、外から説明します。
ストーリーは、内側から思い出させます。
だから刺さります。
「ノウハウを集めても不安は消えません」
これも正しい。
でも、
「教材を買った直後だけ、少し前に進んだ気がする。数日後にはまた不安になって、別の教材を探している」
こう書くと、同じ悩みを持つ人には届きやすくなります。
読者は、説明を読んでいるというより、自分の過去を見せられている感覚になります。
そこで初めて、言葉が入っていきます。
→ 具体の力は「人の心を動かす文章は、きれいな文章ではない」にも書きました。
「失敗 → 気づき」の順で語る
伝わるストーリーには、型があります。
難しく考えなくていいです。
最初に、うまくいかなかった話を書く。
次に、そのときの感情を書く。
そして、今なら何が原因だったのかわかる、と視点を変える。
この順番です。
昔の僕は、こうでした。
そのとき、こう感じていました。
でも今なら、原因はここだったとわかります。
この流れにすると、読者は自然についてきます。
なぜなら、人は完璧な成功談より、つまずきと回復の話に共感するからです。
最初からうまくいった人の話は、少し遠い。
でも、迷った人の話は近い。
失敗した。
恥ずかしかった。
焦った。
見当違いなことをしていた。
でも、そこで気づいた。
この流れには、読み手が入りやすいです。
明鏡ノートで書きたい文章も、まさにこれです。
きれいな正解を上から教えるのではなく、昔の僕がどこでつまずいたのかを書く。
そこから、今なら何が見えるのかを書く。
その方が、読者は自分のこととして受け取りやすくなります。
教訓は、最後に小さく置く
ストーリーを書くときに気をつけたいのは、最初から教訓を押しつけないことです。
先に説教すると、読者は構えます。
「軸を持ちましょう」
「読者目線が大事です」
「具体的に書きましょう」
「ストーリーを使いましょう」
言っていることは正しくても、最初からこれだと少し重い。
読者は、まだ聞く準備ができていません。
だから、先に場面を書きます。
昔の僕が、何に悩んでいたのか。
どんな失敗をしたのか。
どんな感情だったのか。
そのあとに、教訓を一つだけ置く。
大きく言いすぎない。
まとめすぎない。
「だからこうすべきです」と強く押さない。
静かに置くくらいでいいです。
たとえば、
「足りなかったのは、情報ではなく軸でした」
これくらいでいい。
ストーリーのあとなら、この一文が効きます。
先に言えば正論です。
でも、後に置けば気づきになります。
この順番が大事です。
→ 一人に語る話は「たった一人に向けて書くと、なぜ刺さるのか」にもつながります。
ストーリーは、正論を届ける器になる
正論が悪いわけではありません。
軸は大事です。
誰に届けるかは大事です。
具体性は大事です。
読者の悩みを見ることも大事です。
でも、正論だけをそのまま渡しても、受け取られないことがあります。
だから、ストーリーが必要になります。
ストーリーは、正論をやわらかくするための飾りではありません。
読者が自分のこととして受け取るための器です。
昔の僕の失敗を書く。
そのときの感情を書く。
今なら何が原因だったのかを書く。
最後に、小さく気づきを置く。
この流れにすると、言葉は届きやすくなります。
正論は、入口で弾かれることがあります。
でも、ストーリーは心の中まで入っていきます。
だから、伝えたいことがあるなら、いきなり教えない。
まず、昔の自分の話から始める。
そこに、読者が自分を重ねられたとき、文章は初めて動き出します。
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